コラム

バンクシーの活動を年代順に解説

2023-08-20

バンクシー作品の販売と解説

バンクシー(Banksy)、この名前は今やストリートのみならず、サザビーズなどの老舗オークションハウスをも騒然とさせ、バンクシーのストリートアート作品は予期せぬ場所に突如として現れ、社会へメッセージを投げかけていきます。

1200万人を超えるフォロワーを誇るバンクシーの公式インスタグラムから写真が投稿されるやいなや、それは瞬く間に大手メディアやギャラリー、そして影響力のあるインフルエンサーたちによって世界中に拡散されていきます。それでも、正体を明らかにしないまま匿名性を守り続けるバンクシー。彼の正体に関する憶測は尽きることがないものの、今もなお詳細は明らかにされていません。

バンクシーという名の下、彼は素性を隠し続ける覆面アーティストとしての立場を貫いています。これが意味するのは、バンクシーの作品や動向に関する公式な情報は常に限定的であり、彼の初期の活動に精通していなければ、真の情報を得るのは一筋縄ではいかないということです。

老舗オークションハウスや非公式出版物の中に誤情報を見かけることがあるのはそういった理由からでしょう。その秘密主義はバンクシーの謎をより一層深め、世界中の興味を惹きつける要因となっています。

バンクシー(Banksy)その謎多き正体

バンクシー, Banksy

イギリス南東部ブリストル出身とされるバンクシー(Banksy)。彼の生年は1973年か1974年、その正体はロビー・ガニンガム(ロビー・バンクス)がバンクシーになった、、とも囁かれていますが公式には何も発表されておらず、依然として正体は不明なままです。

2002年 - 初!米国 LAでエキシビション「Existencilism (イグジステンシリズム) 」(個展)を開催

Bird with Grenade

2002年6月、バンクシー(Banksy)はアメリカ・ロサンゼルスの33⅓ Galleryで自身初のエキシビション「Existencilism (イグジステンシリズム) 」(個展)を開催しました。バンクシー(Banksy)にとってアメリカでの初のエキシビション(展示会)でありながら、ほとんどの作品が完売するという快挙を成し遂げました。

2003年 - 伝説のゲリラ的エキシビション「Turf War」を開催

Turf War, チェ・ゲバラ

2003年、バンクシーはギャラリー Pictures on Walls(POW)から初のエディション作品「HAVE A NICE DAY」を発売しました。同年、バンクシーは伝説に残るゲリラ・エキシビション「Turf War(ターフ・ウォー)」をイースト・ロンドンのダルストンという街で開催しています。バンクシーがTurf Warを行う時期と前後してダルストンには音楽、アート、ファッションを追求する高感度な若者たちが暮らしたい人気の街へと変貌を遂げて行きました。

2004年 - Pictures on Walls(POW)から Girl with Balloonを発売

Girl with Balloon, 風船に手を伸ばす少女

2004年にPOW(Pictures on Walls)からGirl with Balloon(エディション作品)を発売しました。当時のバンクシーは「知る人ぞ知る」といったグラフィティ・アーティストで今ほど、世界中で知られているわけではなかったため、まとめ買いができたり今では信じられないことが起こっていました。後にこの作品はバンクシーの代表作としても広く知られるようになり、「イギリス人が愛するイギリス人アーティストの作品 第1位(2017年)」に選ばれました。2018年には、Girl with Balloonが1億5千万円で落札された直後にシュレッダーにかけられた事件で大騒ぎになりました。

2005年 - NYの美術館に侵入して作品を無断で展示

バンクシーは、生きた約200匹のネズミを放つ大胆なエキシビション「Crude Oil」を開催。その様子はイギリスChannel4のニュース動画で紹介されました。

2005年3月、バンクシー(Banksy)は世界中に新たな衝撃を与えます。MOMA、ニューヨーク近代美術館、アメリカ自然史博物館、ブルックリン美術館の4つの名だたる美術館で無断で作品を展示決行。これらの作品は数日の間、守衛にも観客にも誰にも気づかれずに展示され続け、そのニュースは世界中を駆け巡りました。さらに、同年5月には大英博物館にも無断で作品を展示し、この時の作品は後に大英博物館のエキシビションで正式に展示されることとなりました。

さらに、同年5月にバンクシーの行為は更にエスカレート!大英博物館にも無断で作品を展示し、後に大英博物館のエキシビションで正式に展示されるという前代未聞の出来事に発展しました。

バンクシー(Banksy)のこのような行動は、アート界における既存のルールや枠組みに対する挑戦として、また、彼のアートが持つ社会的・政治的なメッセージをより多くの人々に届けるための独自の手法として、世界中で話題となりました。彼の作品は単なる美術品を超え、社会への問いかけや挑戦の象徴となっています。バンクシー(Banksy)のアートは、ただの壁の一部であるだけでなく、世界中の人々に影響を与え続けています。

バンクシー(Banksy)エキシビション Barely Legal

2006年9月15日〜17日、バンクシーは大型のエキシビション「Barely Legal」をロサンゼルスで開催しました。このエキシビションでは、37歳のインド象「TAI」の体にペイントを施し展示し、動物愛護団体から大きな批判を受けました。また、このエキシビションにはブラッド・ピットやアンジェリーナ・ジョリーなどの著名人も訪れました。

同年9月には英国内の48店舗のレコードショップで、デンジャー・マウスによってリミックスされたパリス・ヒルトンのデビューアルバムの偽物を、バンクシーが細工した500枚のCDとすり替えました。その後、これらのCDが数十万円の高値で取引されることになるとは、誰も予想していなかったでしょう。

2008年 - バンクシー、ペストコントロールを設立する

ペストコントロール

2008年1月、「何の罪もないコレクターが偽物を摑まされないように」コレクターが偽物を購入するリスクを避けるために、バンクシーの作品の唯一の公的認証機関である「Pest Control」を設立しました。
(参考)Banksy(バンクシー)作品の本物と偽物の見分け方

同年5月3日から5日には、フランスのカンヌ映画祭の名にかけたステンシルアートの祭典「Cans Festival」を開催し、DOLKなど新たなグラフィティ・アーティストたちが知られる場を提供しました。

2008年10月には、ニューヨークのグリニッジ・ビレッジでたいへん興味深いエキシビション「The Village Pet Store and Charcoal Grill」を実施。バンクシー初のニューヨークでのエキシビションになりました。

2009年 - 最大7時間待ちのエキシビション「Banksy vs. Bristol Museum」

Banksy vs. Bristol Museum

バンクシーが育った街、英ブリストルで初のエキシビション「Banksy VS Bristol Museum」が展示されました。このエキシビションは非常に高い人気を博し、入館までに最大7時間の待ち時間が発生するほどで、このことによりイギリス国内でのバンクシーの人気もより一層高まったわけです。

2010年 - バンクシーの初監督映画作品が公開

バンクシーの初監督映画作品「Exit Through The Gift Shop」

バンクシーの初監督映画作品「Exit Through The Gift Shop」は、ストリートアート界の裏側を描いたドキュメンタリー映画で、公開されたことで大きな話題を呼びました。この映画は、バンクシー自身の活動や他のストリートアーティストたちの作業過程を捉えており、ストリートアートの世界に深く潜入した内容となっています。映画の公開により、バンクシーの影響力がさらに拡大し、ストリートアートというジャンルの知名度を高めることに貢献しました。

2013年 - ニューヨーク市長まで巻き込んだ1ヶ月間のアートパフォーマンス

Banksy Does New York

10月1日から31日の1ヶ月間、バンクシーは「Banksy Does New York」と題したアートパフォーマンスをニューヨークで実施しています。

この1ヶ月間にわたるパフォーマンスでは、バンクシーはニューヨーク市内の様々な場所で彼の特徴的なアート作品を披露しました。このプロジェクトは、当時のニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグまで巻き込むほどの注目を集め、バンクシーのアートとニューヨーク市の相互作用を見せつける一大イベントとなりました。この期間中、バンクシーの作品や彼の行動は日々多くの人々の話題となり、メディアでも大きく取り上げられました。

2015年 - バンクシー「夢の国」をディスる「ディズマランド」を開催

ディズマランド(Dismaland)

バンクシーは「夢の国」をディスったテーマパーク「ディズマランド(Dismaland)」を、海沿いの美しい街、ウェストン・スーパー・メアーで期間限定で開催しました。ディズマランド(Dismaland)は、一部の人々が夢のような時間を過ごす一方で、世界中の難民問題、チベット問題、飢餓、命や権利の喪失といった深刻な問題を浮き彫りにし「これでいいのか?」と来園に問うようなテーマパークでした。ちなみに園内の食事はベジタリアンのみ。開催地のウェストン・スーパー・メアーはバンクシー少年にとって夏休みの思い出深い場所。かつてプールだった場所にディズマランド(Dismaland)は作られました。バンクシーのエディション作品のタイトル「Weston-Super-Mare」はこの土地の名前です。結局、ディズマランド(Dismaland)は約15万人の来園者を迎え、約35億円の経済効果を地域にもたらしました。社会問題をあぶりだしながらも地域貢献を果たし、訪れた人々を楽しませながら、大成功を収めました。

2017年 - 世界一眺めの悪いホテル「The Walled Off Hotel」をパレスチナにオープン

長めの悪いホテル The Walled Off Hotel

2017年にはバンクシーにとって重要な二つの出来事がありました。まず、3月3日にはイエス・キリストの生誕地であるパレスチナ・ベツレヘムにバンクシーのホテル「The Walled Off Hotel」をオープンし、このホテルはその独特な立地とコンセプトで注目を集めました。

続いて、12月17日には英 BBCがバンクシーのドキュメンタリー番組「The Alternativity」を放送。番組内では、「世界一、クリスマスが似合う街」として知られるベツレヘムでのクリスマスをテーマにしており、視聴者に対して、この街と祝祭に関して一般的な理解とは異なる新しい考え方や視点を紹介しました。

2018年 - 前代未聞!オークション中に誕生した作品「Love is in the Bin」

サザビーズ、オークションでシュレッダーにかけられたバンクシーの作品、Girl with Balloon

えっ!まじで? バンクシー(Banksy)の「Girl with Balloon」落札価格 1億5千万円が落札直後、シュレッダーへ!!

バンクシーの代表作「Girl with Balloon」が英国のオークションハウス、サザビーズで約1億5千万円で落札された直後の出来事は、アート界に衝撃を与えました。落札された瞬間、作品は突如として細断され、これにより新たな作品「Love is in the Bin」が誕生することになり、この驚きのパフォーマンスはバンクシーの予測不可能なアートスタイルと、市場への挑戦を象徴する出来事として広く知られています。

2019年 - イギリス議会を描いた「Devolved Parliament」が約13億円で落札

2019年6月、英国王立美術院のサマー・エキシビションでバンクシーの作品が展示され、10月には一般公開されないバンクシー公式ショップ「Gross Domestic Product」がロンドン郊外のクロイドンにオープンしました。同じく10月、ロンドン・サザビーズのオークションでは、バンクシー 過去最大サイズの作品、チンパンジーによるイギリス議会を描いた「Devolved Parliament」が約13億円で落札され、これは当時バンクシー作品の史上最高落札額となりました。また、12月にはイギリス第2の都市バーミンガムにバンクシーがクリスマスに合わせ新たな作品を残し、注目を集めました。

2020年 - 日本初!大型のバンクシー展が日本各地で開催される

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2020年2月14日のバレンタインデーに、バンクシーはイギリス西部ブリストルの民家の壁に新作を残していきました。この作品では、Y字型のスリングショット(パチンコ)で花束を空に撃ち放つ少女が描かれています。

続いて、同年3月には日本でバンクシーの大規模な展覧会が開催されました。これは日本で初めての大型バンクシー展示会となります。

6月には、バンクシーが海に投棄された奴隷商人エドワード・コルストンの銅像に関する平和的な解決策を提案し、7月には、世界中がコロナ禍にいる時期、バンクシーはロンドンの地下鉄にラット(ネズミ)を残していきました。

2021年 - バンクシー、革新的アートと記録的落札価格で世界を魅了した年

2021年、バンクシーは再びアートの世界に彼の独特な足跡を残しました。2021年8月といえば世界中がコロナで苦しんでいた頃。まず、8月にはバンクシー流 コロナ禍の夏休みの過ごし方を公式インスタグラムで披露し、この一連の作品は、パンデミック中のサマーバケーションをユーモラスかつ風刺的に表現しています。

同じ月には、東京天王洲アイルで「バンクシーって誰?展」と題された彼の大型展覧会が開催されました。といってもこちらはバンクシー非公認のエキシビションではありますが、日本国内ではこれが2番目となる大規模なバンクシーの展示会に。2006年にLAで開かれたエキシビション「Barely Legal」を追体験できるようなセットや実際にThe Walled Off Hotelに宿泊したかのような疑似体験は、来場者をワクワクさせるエキシビションになりました。

10月には、バンクシーのアート市場における価値の高さを見せつける出来事がありました。オークションの最中に仕上げたといっても過言ではないあの作品、Girl with Balloonの落札直後に突如シュレッダーにかけられ生まれた作品「Love is in the Bin」が 約29億円で落札されました。この額はバンクシー作品としては史上最高の落札額であり、彼の才能がいかに認められているかを証明しています。

そして年末にかけて、バンクシーはたった3800円でオリジナルTシャツを販売し、その背後にあるメッセージや目的が広く議論されました。この一連の動きは、バンクシーが単なるアーティストを超え、世界に向けて末端に暮らす人々たちの愛ある代弁者であることを改めて浮き彫りにしました。

2021年、バンクシーは彼のアートテロを武器に、世界中の観客に考える機会を提供し続けました。彼の作品はただの壁画やオブジェに留まらず、社会の問題を私たちを気づかせ、目を背けさせず、対話を喚起するものとなっています。

2022年 - バンクシー、戦禍のウクライナの壁に平和のメッセージを残す

2022年11月、世界はバンクシーが再び歴史のページに彼の名を刻む瞬間を目の当たりにしました。バンクシーは戦火に包まれたウクライナの壁に7つの新作を残したのです。これらの作品は、破壊と混乱の中でさえ、アートがいかに人々の心に希望の光を灯すことができるかを示すものでした。バンクシーはただのアーティストではなく、戦禍の人間性と平和の象徴としてその存在を示しました。

そして12月、バンクシーの作品が再び市場に現れますが、今回は通常のオークションとは異なります。バンクシーの1000万円以上はする作品が、驚くべきことに85万円という格安の価格で販売されたのです。この行動は単なる価格設定の問題ではなく、売上全額がウクライナ支援のために使われるという、深い意図が込められていました。この動きは、バンクシーがどれだけ社会問題に熱心に取り組んでいるかを示す一例であり、彼の作品が単なるアートの枠を超えて、実際の社会変革を促す力を持っていることを証明しています。

2022年のバンクシーの行動は、彼がただのストリートアーティストではなく、社会に影響を与える文化的アイコンであることを改めて世界に示しました。彼の作品は、芸術と現実の間の架け橋となり、現代社会の痛みと希望を映し出しています。

2023年 - バンクシー、ファンが待ち望んだ14年ぶりの公式エキシビションを開催

2023年、バンクシーは再び世間に彼の独特な存在感を示しました。年初、バンクシーの公認ウクライナの切手が、わずか670円という手頃な価格で販売されたことが話題を呼び、この切手は彼のアートをより広く公衆に届ける手段として、またウクライナへの支援の一環として注目を集めました。

6月15日からは、バンクシーが14年ぶりに公式エキシビション「CUT & RUN」をグラスゴーで開催。このエキシビションは、彼のアートの新たな展開を示すもので、ファンやアート愛好家にとっては待望のイベントとなりました。

バンクシーの動向は常に変化に富んでいます。今後も彼の新しいパフォーマンスや、過去に紹介されなかった作品などが追加される予定です。

彼の活動に興味を持つ方は、この記事を定期的にチェックして最新の情報を得てください。バンクシーの世界は、予測不可能で刺激的なものであり、常に新しい驚きを提供してくれます。


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バンクシーの正体とは? Banksy代表作品の意味と解説

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