バンクシー展【公認】

バンクシーのディズマランド(Dismaland)は、世界の問題をあぶりだしたようなテーマパークだった.....

2019-05-14

バンクシーは、Weston Super Mare(ウェストン・スーパー・メア)のとある建物の前を通りかかったとき、塀に囲まれた海沿いの施設のフェンスが一枚飛んでいたので、隙間から中を覗きました。子供の頃によく泳ぎに来たその場所は15年もの間手付かずで、刑務所の庭のような雰囲気に様変わりしていました。その様子に心奪われたバンクシーは 2015年夏、ディズマランド(Dismaland)困惑の遊園地という家族向けのテーマパークを作ることに決めました。

バンクシー(Banksy),ディズマランド(Dismaland)
バンクシーによるスケッチ。リゾート地だった海辺の屋外プール場写真にディズマランドのイメージを描く。

Bertolt Brecht once said Art is not a mirror held up to reality, but a hammer with which to shape it'.
Which is fine, but what if you're in a hall of mirrors and the giant hammer is made of foam?
This is the question raised by Dismaland Bemusement Park.

ベルトルト・ブレヒト(ドイツの劇作家、詩人)はかつて「芸術は現実を映す鏡ではなく、それを形成するハンマーである」と述べました。それは素晴らしい考えですが、鏡の回廊にいて、その巨大なハンマーが実は泡でできているとしたらどうでしょうか?

このような疑問が、「ディズマランド遊園地」によって提起されています。

バンクシー ディズマランド(Dismaland)パンフレットから

英国のテレビ局「Channel 4」が取材したディズマランド内部の動画

世界中から58人のアーティストを招待

バンクシーは初め、個展にしようと考えていたそうです。ところが、市が建物を貸してくれることになったことで思い直し、プロジェクトに参加してくれるアーティストたちに応援を求めたそうです。

最終的には、17ヶ国から集まった、経歴や専門分野は多種多様の50人以上のアーティストたちの作品が集まり、ヴェネチア・ビエンナーレで金賞を受賞した人、100万ポンドを燃やした人、小屋で40年かけて横断幕を作った年金受給者まで実に様々です。

そこで気になるのが、それぞれのアーティストに新作を依頼したのか、それとも、これまでの作品を見て気に入ったアーティストに声をかけたのか?という点。バンクシーは「その両方だ」とインタビューに答えていました。

blank

ダミアン・ハースト、ジェニー・ホルツァー、ディヴィッド・シュリグリー、ジェームス・コーティー、ジェフ・ジレット等を含む、58人のアーティストの作品がディズマランドに一堂に介したあり得ないほど貴重な瞬間。

blank
宙に浮くバルーンの下に剣が待ち構えているのがダミアン・ハーストの作品

ディズマランド内のギャラリースペース「The Galleries」を中心に、園内の至る所に彼らのアート作品が展示されており、ディズマランドからも世界的なアーティストが生まれていきました。

ジェフ・ジレットの展示作品

blank

その代表的な人物が、バンクシーに多大なインスピレーションを与えたアメリカ人アーティストのジェフ・ジレット(Jeff Gillette)です。彼はスラム街の中に佇むミッキーをもう30年近く描き続づけていますが、右下の作品が ディズマランドの公式ポスターとして販売されました。

中央の観覧車の作品は、元々中央にあったミッキーの顔を消して欲しいとバンクシーから依頼されたそうです。これは、ジェフ・ジレット本人から直接聞いた話で、バンクシーもインタビューで「ミッキーマウスのイメージはディズマランドでは禁止」と決めていたそうですね。

Josh Keyes 「Stampede」

ディズマランドで注目を浴びたアーティストの一人にジョシュ・キーズ(Josh Keyes)がいます。彼もアメリカ人アーティストで、ジェフ・ジレットの作品の真向かいに彼の作品が展示されていました。上の画像の作品は「Stampede」という作品で、この作品もディズマランド内で配布されたフライヤーに印刷されていました。

ディズマランド以前も「知る人ぞ知る」人気のあるアーティストでしたが、ディズマランド参加後、人気急上昇!ジョシュ・キーズの作品に熱い注目が集まりました。

Paco Pomet「Internacional」

blank

もう一人、特にご紹介したいのがスペイン人アーティスト Paco Pomet(パコ・ポメ)です。上の作品のタイトルは「Internacional」。クッキーモンスターとゲリラ兵士たちが一緒にトラックに乗り込んだ作品に世界中から注目されました。この作品も園内で配られたフライヤーに印刷されていました。

ディズマランド開催後2〜3年間、この三人の人気が凄まじく、発売する作品のほとんどが飛ぶように売れていきました。日本のバンクシー展でもジェフ・ジレットの作品が展示されていたのが印象に残っています。

お昼と夜の2部生 チケット有りでも長蛇の列

blank

1日4000枚のチケットがオンラインで販売され、事前にチケットを予約購入できなかった人のために当日券が500枚追加で現地販売されました。しかし、チケットを事前に購入していたとしても日によっては入場までに2〜3時間待ちもあったようです。
普段はおそらく、のんびりとした海沿いの田舎街に、人、人、人が溢れかえっていました。ディズマランドは昼と夜の2部制でオープンしていました。

ディズマランド内でのライブ

夜の部ではライブが開催。毎回違うアーティストが登場で盛り上がっていました。

夜はライトアップが幻想的で、週末になるとBLURのフロントマン(デーモン・アルバーン)や Pussy Riotが来場。昼のトロピカルな雰囲気とは打って変わって夜は、ビール片手に大人が楽しめるパークになっていました。

園内の飲食店はすべてベジタリアン

Dismaland(ディズマランド)とFalafel(ファラフェル)を掛けて、Dismalafel? 値段は5ポンドですごく美味しかった!

ディズマランドの園内にはバーや屋台、テント内で、ピザやコーヒ、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケを包んだサンドイッチ)などの軽食を楽しめました。動物を殺したお肉は提供されていなかったようですね。

The Galleriesでの展示作品やコンセプトを考えると当然だろうと思います。

ディズマランド閉園後は...

ディズマランド閉園後は、建設に使用した資材のすべてがフランス北部のカレーの街の難民キャンプに送られ、難民のためのシェルターや仮設住宅建設に使われました。

最後に

約5週間開催したディズマランドの来場者は延べ15万人。約35億円の経済効果をウェストン・スーパー・メアにもたらしました。実際に僕も4日間 ウェストン・スーパー・メアに滞在。そして、4回、ディズマランドへ足を運び満喫してきました。

地元のタクシードライバーに尋ねると、「普段こんなに人が訪れることはないけど今年の夏はバンクシーのおかげで儲かってるね」と、朝から晩まで駅と各ホテルの往復でホクホクしていたのが印象的。

夏のバケーション中でも宿泊客が少なかったディズマランド周辺のホテルは予約を取るのが難しくなるほどで、「今年はバンクシーがディズマランドを開催してくれたおかげで、久しぶりに活気が戻ってきたわ!」と家族経営のホテルの奥さんが嬉しそうに話してくれたのが印象的です。

最後に、バンクシーは「ディズマランドから何を持ち帰って欲しいですか?」という質問に「お土産用のプログラム、Tシャツ3枚、マグカップです。このプロジェクトは、スポンサーや政府からの援助ではなく、自費で行っていますから」とのことでした。

-バンクシー展【公認】
-

blank