バンクシーって誰?展(国内二つ目となるバンクシー非公認大型展覧会)の東京開催を8月21日(土)に控え、日本ではバンクシーへの注目度が高まっている。
一方、イギリスでは、8月8日頃からSNSを中心に「バンクシーがイギリス東海岸部の街にストリートアートをたくさん残している!」という噂が飛び交い話題になっていた。
バンクシーはフォロワー数 1100万人を越えた自身の公式インスタグラムへ2021年8月14日に約3分の動画を投稿。噂は本当で、東海岸沿いの街に9つの作品を動画の中で公開した。
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動画のタイトル「A Great British Spraycation=ア・グレート・ブリティッシュ・スプレーケーション」のタイトルにもある「Spraycation」は、コロナ禍で海外旅行を制限され、国内や近場でバケーションを過ごすことを勧める「Staycation = ステイケーション」をもじったバンクシーの造語だ。バンクシーは造語がお好きなようでこれまでにも Existencilism (イグジステンシリズム) 」、「ディズマランド(Dismaland)」など、いろいろ生み出している。
スプレー缶をクーラーボックスに詰めて作品を残しまくるのがバンクシー流の夏休み「スプレーケーション」なのだ。
バンクシーが海辺の街に残していった9つのストリートアート作品の意味と解説
約3分の動画には、パーカーを着たバンクシーがキャンピングカーでイギリス東部の海辺の街「サフォーク」と「ノーフォーク」に9作品を残していく様子が映し出されている。
デッキチェアでくつろぐネズミ(ラット)
バンクシーといえばラット(ねずみ)、ラットといえばバンクシーというくらい、切っても切り離せない関係の両者。動画の最初に登場するのもやっぱりラット(ねずみ)で、カクテルグラスを片手に優雅にパラソルの下で寛ぐ様子を残していった。
UFOキャッチャーに獲って行かれそうなオバァ
「イギリスのビーチ沿いにはゲームセンターあり」というほどゲームセンターは定番の光景だ。そういえば、ディズマランド(Dismaland)開催の地、ウェストン・スーパー・メアーにもあったなぁ。バンクシーのサマーバケーションの思い出の一つにUFOキャッチャーがあるのかもしれない。
フライドポテトを狙うカモメ
イギリスの国民食でもあるフライドポテトを突っついているカモメの姿を動画内で見ることができるが、このストリートアート作品は廃棄ゴミをフライドポテトに見立てて、カモメが今にもフライドポテトを咥えて飛び去っていきそうな様子をステンシルスプレーで表現している。
これはイギリスの夏の海辺の典型的な光景で、道端に落ちているフライドポテトもよく見かけるし、カモメも多い。
4:ヤドカリと高級宿、宿泊の方限定!
海辺の防波堤にスプレーペイントされたこの作品。1匹の立派な殻に入ったヤドカリと3匹の次のやどを探すヤドカリ。真ん中のヤドカリが持っているプラカードには「LUXURY RENTALS ONLY=高級の宿しかありません」と書かれている。
コロナ禍の京都のように、世界中の富豪がリゾート地・観光地の物件を買い漁り、価格が高騰。一般庶民がリゾート地では泊まることがさらに難しくなる格差社会を皮肉っているのかもしれない。
5:みんな同じ船に乗っている We're all in the same boat.
英サフォーク州のニコラス・エベリット公園に残されたこの作品は、作品を描く位置 - その場所にある物や廃棄ゴミなどを絶妙に活かしたバンクシーが得意とするスタイルの作品だ。
船に乗るのは3人の少年。金属製の板を船に見立て、ボロボロの金属板の船が沈んでいくように見える。
1番前の少年は双眼鏡で遠くを見て、1番後ろの少年は沈みゆく船からバケツで水を出している。真ん中の少年は双眼鏡の少年にくっつきながらも、バケツで水を出す少年を眺めている。
自然災害が増える昨今、進みつつある気候変動について警鐘を鳴らしているのか。
それとも、沈みゆく船(世界)を先導する支配者階級(双眼鏡の少年)と、その船(世界)を助けようと頑張る活動家(バケツの少年)、支配者階級について行きながらも活動家のことが気になる一般市民(中央の少年)を描きつつ、現代の社会の仕組みを描いているのか、この一つの作品だけでも色んな解釈が生まれてくる。
6:アイスクリームとあっかんべーの像
英ノーフォーク州の街「キングスリン」にある像にアイスクリームを持たせ、あっかんべーの舌を付けたのがこちらの作品だ。
こちらは「フレドリック・サベージ」の像。蒸気技師であり、1889年〜1890年にキングスリンの市長を務めた人物で、100年以上この像はここに立っている。
動画の中では、キャンピングカーの中でアイスクリームを作り、作業着を着たバンクシーらしき人物がこの像に、アイスクリームを持たせ、あっかんべーのベロを付けている。
7:バールで砂の城を作る少年
英サフォーク州の街「ローストフト」の壁に残されたこちらの作品にはバールを使って道路のコンクリートを破壊し、その中から取った土で砂の城を作る少年が描かれている。
普通なら子供はバケツやスコップを使って砂の城を作るのかも知れないが、バールを使って道路のコンクリートを掘り出してまで砂の城を作るところに怖ささえ感じる。
動画内のイギリス人の女性はこの作品を見て「これは心無い破壊行為よね。」と話していた。
8:バス停上のダンス
英ノーフォーク州のグレートヤーマスのバス停の上に残されたこちらの作品には、バス停の屋根をダンスフロアのに見立て踊る2人のカップルとアコーディオンで伴奏する老人が描かれている。
動画では、深夜バンクシーがキャンピングカーの屋根に上り、このバス停の上でステンシル(型紙)を壁に貼り付け、スプレーペイントしている様子が映っている。
いくら夜とはいえ、電気の付いた民家の隣で、誰にも見つからずに短時間で作品を仕上げるバンクシーのテクニックは本当に素晴らしい。
アコーディオンの音色に合わせ、真夏の夜のダンスを楽しんでいる老人と女性、そしてこの作品が描かれた環境が借景になり本当にこの壁にしっくりきている。
作品を残す壁と周りの環境と作品のバランスがばっちしで、バンクシーのセンスが改めて理解できる作品だと思う。
9:ミニチュア・ビレッジのタギング
この作品が残されたのは英ノーフォーク州グレートヤーマスにあるミニチュア・ビレッジ。
バンクシーはこのミニチュア・ビレッジの中にあるミニチュアの馬小屋に「BANKSY」と「GO BIG OR GO HOME」というタギングを残した。
「BANKSY」のタギングは馬小屋の馬にまで描かれ、その前にはバスケット入ったリンゴを地面に落とした少女が立っている。
「GO BIG OR GO HOME」とタギングされた側面の壁の車輪の上にはネズミが居る。「GO BIG OR GO HOME=ビッグになれないなら家に帰れ!」は、ネズミやお猿の作品で世界の舞台で戦ってきた、若い頃の自分の意気込みを語ったのだろうか。
以上9作品が「A Great British Spraycation」というタイトルの動画に登場した作品で、どれも単純でわかりやすく明快な作品が多かったが、どの作品も色んな解釈ができる秀逸な作品が多かった。
これからもバンクシーがどんな作品を残すのか、どんなハプニングを起こすのか、このブログでまた紹介して行こうと思う。