コラム

バンクシー作品から学ぶアート思考1

2023-03-07

2017年、山口周氏が「世界のエリートはなぜ「美意識を鍛えるのか」」という書籍を発売。アート・芸術というカテゴリーで異例の20万部以上が売れている。この本の発売以降「アート思考」という考えがビジネスパーソンの間で一気に拡がった。書籍の中では「世界のエリート達がなぜ美術館に通い、オフィスにアートを飾ることで感性や感覚を磨いているのか」が説明されている。

そして、この本の発売以降これまでアート思考に関する書籍がたくさん発売されてきた。

アート思考とは何か? ゼロから1を生み出す魔法の思考法?

アート思考といっても明確な答えがあるわけでない。これとこれをやればアート思考が完全に身に付くというものでもない。

しかし、歴史に名を残すほど多くの人に影響を与えたアーティストの作品を毎日眺めることで、その影響力のある「思考」をビジネスにも落とし込めるようになるのがありがたい。

まずはアーティストが歴史に名を残すにはこの3つが必要だと思う。そして、多くの歴史的なアーティストがこれに当てはまる。

  1. 唯一無二のスタイルでアート作品を生み出している
  2. 作品がその時代の人々を魅了し、受け入れられている
  3. より長く人気を持続させるために、色んな形で唯一無二の価値を提供し続けている

人気アーティストはこの3つを10年、20年と続けていくことで、歴史に名を残すアーティストへと成長していく。

アート思考とビジネスの関係とは

このアーティストの考えはビジネスに置き換えることもできる。

  1. 唯一無二の形・スタイルで商品やサービスを生み出す。
  2. 商品やサービスがその時代の人々を魅了し、好まれている。
  3. その商品やサービスの人気を持続させるため、唯一無二の価値を提供し続けている。

アート思考を簡潔にすると、この3ステップで言い換えられる。

まずはゼロから1を生み出す。2つ目はそのアイディアをその時代の人々に愛されるように作り変える。そして、3つ目はそれを持続発展させていく。

アーティストが成功するには、彼らの作品が過去これまでにない唯一無二でないといけない。唯一無二、オンリーワンというのは絶対必要条件だ。

一方でビジネスで唯一無二の商品やサービスを生み出し、成功すれば、市場を独占できる。だからこそ、世界のエリート達は、アートを学び、アートに触れていたがるのだろう。

バンクシーはアーティストとしてだけでなく、ビジネスマンとしても優秀

例えば、2015年、イギリス南西部の廃れたリゾート地「ウェストン・スーパー・メア」で、アート版テーマパーク「ディズマランド」を開催。世界中から58人のアーティストを招待。そして、15万人の来園者、約35億円の経済効果をもたらした。

2018年、サザビーズのオークションで自身の作品が約1億4000万円で落札。落札直後、額縁に内蔵したシュレッダーで作品をズタズタに切り裂いた。このパフォーマンスは世界中の人々を驚かせた。同じ作品が3年後のオークションの出品時に、約29億円まで価格が上昇した。

バンクシーの公式インスタグラムには1200万人以上のフォロワーがいる。なので、バンクシーが最新作を発表すると、瞬時に1200万人のフォロワーに自身の最新作を届けることができる。これまで大手メディアなしでここまでの数にリーチできるアーティストは史上初だ。

バンクシー作品から学ぶアート思考1

なぜバンクシーの作品がアートとして素晴らしいか... そしてバンクシーの作品から学び、応用できる考え方とは何か... これまでのバンクシーの作品やパフォーマンスを通じて紹介して行こう。

溢れるモノや情報の中で、すぐに見つけられるアイコン的作品

21世紀になり、インターネットの加速度的な普及でモノや情報が溢れ返っている。テレビもネットもSNSも「私を見つけてくれ!」と言わんばかりに、動画や写真の広告の波が押し寄せる。

モノや情報が溢れた中で作品を見つけてもらうには、ドラえもん、ドラゴンボール、ミッキーマウス、スヌーピーなどアニメキャラのような「わかりやすく、特徴的で見つけやすい」アイコン的なキャラクターがぴったりだ。

バンクシーを象徴する作品には、おサル、スマイリー警官、「風船と少女」の少女などなど。作品を見ればすぐにバンクシーの作品だとわかるアニメキャラのようにアイコン化された作品が多い。

どこか忘れてしまったが、バンクシーはあるインタビューでこんな内容を語っていた。

ストリートに作品を残す時は、車で作品の前を通った時に、すぐにその作品を理解できるようにしている。

バンクシーは色んな情報が周りにあっても、一瞬で目が留まり、理解しやすいように作品を作っているということだ。

スマホが一般的に普及する前の2000年前後から、バンクシーはネズミやおサル、スマイリーの警官など、すぐに見つけやすく、わかりやすい作品をたくさん制作してきた。

バンクシーは少し先の未来を見て、作品を制作していたのかも知れない。

まとめ 超情報過多の時代に備えバンクシーが見ていた時代の捉え方

「ゼロから1を生み出す。そして、そのアイディアをその時代の人々に愛されるように変える。さらに、それを常に発展させていく」というのが成功しているアーティストの考えだ。

そして、時代の少し先を読み、時代に合わせた「見つけやすく、わかりやすい、かつメッセージが膨らんでいく」作品を作ることで、自分が本当に社会に伝えたいメッセージを伝えているのがバンクシーなのかも知れない。

今後、さらに情報過多が加速する時代になるだろう。そんなスピードの速い時代には、KAWSのコンパニオンやバンクシーの作品のアニメキャラのように、見つけやすく、わかりやすく、しかも、かわいく、覚えやすいアート作品が増えて来るだろう。

今、現代アート界が注目する日本のアニメキャラ

ここ数年、空前の日本人若手アーティストブームと呼べるくらい日本人アーティストに注目が集まっている。ロッカクアヤコ、LY、 KYNE、TIDE、松山智一、天野タケル、平子雄一など。数え切れないほどのアーティストにスポットライトが当たっている。

アニメキャラのようなわかりやすい作品に注目が集まるのも、情報過多の時代がこういう作品を必要としているからだろう。

そして、ビジネスにおいても、唯一無二で、見つけやすく、わかりやすいモノやサービスがSNSを通じて、加速度的に人気を博す流れが続くのかもしれない。

まだまだ、バンクシーから学ぶ要素はあるが、今回はここまでにさせて頂きたい。

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