アーティスト: Banksy
タイトル: I Fought The Law
技法: シルクスクリーン
制作年: 2005
サイズ: 縦 70cm × 横 70cm
エディション: 500
サイン: エディションナンバーのみ
COA: あり
バンクシーの意味深なメッセージに注目!
「I Fought The Law」
バンクシーのシルクスクリーン作品「 I fought The Law 」が発売されたのが 2004年。 作品のサイズは縦70cm x 横70cm。サイン入りが限定150枚。サインなしが600枚。そのほかに文字色が違うAP版が4種類。オレンジ、ピンク、レッド、イエロー、それぞれ 8枚の合計 32枚が発売されています。
政治 × 音楽 × アートから生まれたグラフィティアート
この作品は政治、音楽、アートの三つをレイヤーのように重ねることで、作品の解釈が浮かび上がります。
まずは政治。
作品「I fought the Law」を知るにはまず、この事件について触れなければなりません。
(政治)ロナルド・レーガン暗殺未遂事件
1981年3月30日、首都ワシントンDCにおいて米元大統領のロナルド・レーガン暗殺未遂事件が発生。ロナルド・レーガンは一命を取り留めました。ほんの一瞬の間の出来事だったこの事件は、その一部始終がテレビにより生中継されており、銃撃されるシーンが世界中に放送されることとなりました。
上の画像は事件発生後、ロナルド・レーガン大統領が去った後の様子です。 この事件の犯人は当時テキサス工科大の学生だったジョン・ヒンクリーですが、一番手前で倒れているのが負傷したトーマス・デラハンティ巡査、その奥の壁際で捕らえられているのが犯人ですが姿は写っていません。
バンクシー(Banksy)の「I fought the Law」はこの事件のワンシーンを作品にしています。
次は音楽です。
(音楽)UKパンク・ロックの旗手、ザ・クラッシュの代表曲「I Fought the Law」
日本でも聴き馴染みのあるUKパンクロックの旗手、ザ・クラッシュの代表曲「I Fought the Law」。 ですが実はオリジナルは、アメリカのバンド、ザ・クリケッツが1959年に発表した楽曲になります。 「I Fought the Law(法律とやり合った)」という曲名はいかにもパンクロックらしく、クラッシュのオリジナル曲だと勘違いしそうになるほどハマっていますが、同時に「法律とやり合ったけど、勝ったのは法律」という物悲しさも漂わせています。
最後はアートです。
バンクシー「I FOUGHT THE LAW AND I WON(法律とやりあい、俺は勝った。)」
バンクシーは作品の背景にこう描いています。
「I FOUGHT THE LAW AND I WON」
(法律とやりあい、俺は勝った。)
ご存知のとおり、バンクシーは路上に落書き(グラフィティアート)を残して去っており、でも、それはもちろん違法。 でも、警察に捕まるどころか路上に投下していったバンクシーのグラフィティアートは作品として手厚く保護されていました。
バンクシー 作品「 I FAUGHT THE LAW」の意味と解釈
バンクシーの作品とザ・クラッシュの「I Fought The Law」は、同タイトルでありながら「法律との闘い」において対照的なメッセージを伝えてきます。
ザ・クラッシュの歌詞、「法律とやりあったけど、勝ったのは法律さ」という表現は、権力に屈する感情を示しているのに対し、バンクシーは「法律とやりあって、俺が勝ったさ」と、正反対の立場を取っています。
これは、当時のバンクシーが違法行為でグラフィティアートを創造しながらも未だ捕まらないことを象徴し、観る者に対しても法律や権力、大きなものが自分の前に立ちはだかったとしても、「絶対に勝つ方法、突破する道はある」と伝えたかったのかもしれません。
夢や希望、勇気を与える作品。
作品が生まれた背景を考えれば考えるほど、深みを増すバンクシーの隠れた名作です。