バンクシー作品解説と販売

バンクシーの原点:ネズミ「Love Rat」ほか、10点の作品解説と意味

2022-08-15

バンクシーは、その挑発的なスタイルと革新的な作品で世界中から注目されるグラフィティアーティストです。彼の作品には様々なモチーフが登場しますが、「ネズミ」は特にインスピレーションの源とされています。

Banksy -Love Rat -Wood

ネズミとバンクシーは密接な関係にあります。夜の闇を友とし、社会からは忌み嫌われる存在のネズミは、バンクシー自身が初期のキャリアで経験した、当局からの追跡や社会的な認識と重なります。1990年代から2000年代初頭にかけて、彼のアートはしばしば違法とみなされ、駆除される対象として、壁に描かれたバンクシーの数々のグラフィティアート作品は塗りつぶされてきました。

バンクシーのアートはただ、独創的なだけでなく、私たちが日常で直面する社会的な問題について考えなければならない深いテーマを含んでいます。

Love Rat

バンクシーのネズミ・シリーズ第一弾「Love Rat」は、2004年にロンドンのリバプール・ストリートに初登場し、その後、同年にはシルクスクリーン作品として発売され、サインなし(Unsigned)が限定600枚、サイン入り(Signed)が限定150枚、合計750枚が販売されました。

Banksy -Love Rat

俺は3年間ネズミの絵を描いてたんだけど、ある人に『それは賢いね、アートのアナグラムだよ』と言われ、俺は初めからそれを知っていたふりをしなければならなかった。

バンクシー
Banksy -Love Rat

Love Rat 作品解説

バンクシーの署名とも言える単色のステンシル・スプレーで描かれた「Love Rat」は、前足に大きな絵筆を持っています。それはこのネズミが真っ赤なハートを描き終えたばかりのようで、この作品に唯一の色彩を与えています。

一見すると、この行為は愛を伝播するためのものだと思われがちですが、よく見ると、血のように垂れる赤い絵の具のしずくは、ハートから血を流していることを暗示し、愛が喜びや楽しみだけに限らず一転すると、痛みや憎しみを引き起こす可能性があることを思い出させます。

実際、バンクシーは2004年に発表したこのネズミのシルクスクリーン作品を、「浮気しているパートナー」へ贈るのにちょうどいいプレゼントだとして宣伝していました。

Gangsta Rat 

Banksy Gangsta Rat -Red

Gangsta Ratは2004年にエディション作品として発売。サインなしが限定350枚、サイン入りが限定150枚の合計500枚が販売されました。

他にも背景の「iPOW」のペイントの色がオレンジ、ピンク、ブルー、グレー、グリーン、ミントグリーンなど、AP(アーティスト・プルーフ)も発売されています。

Banksy Gangsta Rat -Light Green

Gangsta Rat 作品解説

スプレーペイントとステンシルの技法を組み合わせた「Gangsta Rat」。描かれているのは、ニューヨーク・メッツの野球帽をかぶり、チェーンのネックレスをつけ、ゲットー・ブラスター(レトロ・ラジカセ)を持っている白黒のネズミ。描かれたキャラクターは、1980年代から90年代にかけてイギリス全土で流行していたニューヨークのアンダーグラウンド・スタイルを彷彿とさせます。

「Gangsta Rat」は、背後の壁にスプレーで「iPOW」と描いています。これはアップル製品 iPodの普及に対する皮肉と、当時バンクシーの作品を発行していたギャラリー Pictures on Walls(POW)への明らかな言及です。

Gangsta Rat オリジナル・キャンバス作品

モノクロのステンシルのネズミの背景には、フリーハンドでスプレーされています。

Rader Rat

Banksy -Rader Rat(ネズミ)

バンクシーは、自分を暗闇で生きるネズミと同一視しています。この作品を通じて、人々がバンクシーの注目の対象であり、人々が世界をどう見ているか、理解していることを示しています。

Unbrella Rat

Banksy -Umbrella Rat

英国紳士と不機嫌なメリー・ポピンズを掛け合わせたようなバンクシーの悪名高いネズミ。

バンクシーは公式作品集「Wall and Piece」で次のようなメッセージを残しています。

ネズミは許可なしに存在し、嫌われ、捕まえられ、迫害される。ネズミは静かなる絶望の中、汚物の中で暮らしている。しかし、ネズミは全文明をひれ伏す力さえ持っている。 もしあなたが汚くて、必要とされてなくて、愛されてないと思うなら、ネズミは最高のロールモデルかも知れない。

バンクシー公式本「Wall and Piece」より

Roller Rat(ローラー・ラット)

Banksy -Roller Rat

バンクシーの「ローラー・ラット」は、壁の落書き(背景のグラフィティ)を塗りつぶすべきか、社会に抑圧された仲間たちに同情して見逃すべきか、というジレンマに直面しています。この作品は、彼が雇われた仕事をするか、同じ境遇の者への共感を取るかという選択を描いています。

バンクシーが影響を受けたアーティスト

ブレク・ル・ラット(Blek Le Rat)

バンクシーがネズミを好むのは、フランスのステンシルアーティスト、ブレク・ル・ラットに影響を受けているとよく言われます。彼はステンシル・グラフィティの父として広く知られ、1980年代にアーバン・アートをフランスに広めたことで有名です。これはバンクシーが活動を始める約20年前のことです。

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