バンクシー作品解説と販売

バンクシー 「風船と少女」の作品解説。Banksy 代表作品【Girl with Balloon】とは

2021-03-19

アーティスト: Banksy
タイトル: Girl with Balloon
技法: シルクスクリーン
制作年: 2004
サイズ: 縦 700mm × 横 500mm
エディション: サインあり 150、サインなし 600
COA: あり

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バンクシーの代表作品、最も有名な作品といえば「Girl with Balloon」です。

この作品は、イギリス人が選ぶ、好きなイギリス人アーティストの作品 第1位にも選ばれています。そして 「Girl with Red Balloon」や「Girl and Balloon」というタイトルで呼ばれることもあります。また、邦題では「赤い風船に手を伸ばす少女」や「風船と少女」とも。

バンクシーはイギリス・ブリストル出身。覆面で素性を明かさず、作品をいつもゲリラ的に発表します。

バンクシーの公式インスタグラムのフォロワーは1200万人越え。新作はこの公式インスタ上で投稿し、1200万人以上の人が彼の作品を目にします。また、各国のメディアがこの新作を取り上げ拡散。そして、世界中でさらに多くの人がバンクシーの作品を目にします。

さらに、社会や政治的問題を風刺した作品は、観る者に物事の本質を深く考えさせる機会を与えてくれます。

「Girl with Balloon」を2分の動画で...

今日は時間がないから、まずは動画でさらっと見たいという方にはこちらがオススメ。

バンクシー 「Girl with Balloon」風船と少女の作品解説

ここからは「Girl with Ballon」の色んなバージョンを画像で見ながら、作品の意味を探って行きましょう。

スティーブ・ラザリデス主催のエキシビション The Art of Banksy から

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まずは、エディション作品の「Girl With Balloon」です。こちらは、バンクシーの代理人を約11年間務めたスティーブ・ラザリデスが開催したエキシビション「The Art of Banksy」に展示されていた作品です。

「風船と少女」は一見するとシンプルでわかりやすいですが、よく見ると考えさせられる作品です。少女が風船を手放したのは、求めていた愛を諦めたからでしょうか。それとも社会秩序へ足を踏み入れざるを得なかったから? この少女は愛を求め続ける運命にあるのでしょうか。シンプルな表現からいくつもの解釈が溢れ出る作品です。

The Art of Banksy キュレーター

少女の手から風船が離れていくのか... それとも、少女が空に飛んでいく風船を掴もうとしているのか... 見る人の心の状態によって、ポジティブに捉えるのか... または、ネガティブに捉えるのか... 180度違う作品の捉え方ができます。

Girl with Balloon(赤い風船に手を伸ばす少女)、初披露はテムズ川

Girl with Balloon, ロンドン・サウスバンク, 2003年

初めて、Girl with Balloonが登場したのは2002年です。場所は、ロンドン南部のエリア「サウスバンク」テムズ川沿いにある階段の壁でした。この頃、バンクシーに今ほどの知名度や人気もなく、作品は市の職員によって塗り潰されました。

また、当時のグラフィティアートといえばバンクシーと言えど、完全に落書き扱いで、すぐに塗り潰されていました。

残念ながら、この壁画も今では存在しません。描いては消され、たまに保護され、やがては盗まれる運命にある... それがバンクシーを含むグラフィティアートの魅力といえるでしょう。

バンクシー 赤い風船に手を伸ばす少女 の意味とは

突風により少女の手から離れてしまったハート形の赤い風船。その風船を取り戻そうと必死に手を伸ばす少女。そして、視線を少し右上にやると「THERE IS ALWAYS HOPE(いつだって希望はある)」とあります。しかし、少女を元気づけるようなメッセージは第三者が書き足したものと言われています。

シリアとGirl with Balloon

興味深いことに、後に出てくる #WithSyria にはこの言葉が使われています。

バンクシーの公式本 Wall and Pieceには、「Girl with Balloon(風船と少女)」の隣のページに以下の言葉を添えられています。

When the time comes to leave, just walk away quietly and don’t make any fuss.(去るべき時が来たら、ただ静かに立ち去り、騒ぎ立てるな)

Banksy Wall and Piece

まるで、「失ったものは仕方ない、いつまでもくよくよするな。ちょうどそういう時期だったんだよ。前を向いて歩いていけ」と、叱咤激励されているように受け取られたこの言葉。

アートは人の心を写す鏡。結局は、自分の心理状態によって解釈がいかようにも変わります。そう、バンクシーの作品は教えてくれます。

【額装版】Girl with Balloon(風船と少女):エディション作品詳細

「Girl with Balloon(赤い風船に手を伸ばす少女)」のエディション作品は、2004〜2005年の間にPictures on Walls(以下POW)からシルクスクリーン印刷で発売。その内サイン入り(Signed)が限定150枚。そして、サインなし(Unsigned)が限定600枚の合計 750枚が販売されました。

他にも、風船の色が違うバージョンがいくつかあります。シンプルな表現の作品なので、色んな額装に合います。

【額装】Girl with Balloon(風船と少女、または、赤い風船に手を伸ばす少女):風船がゴールドver.

また、パープルの風船もあります。その他、ブルーやピンクのバージョンも存在します。

【額装】鉄扉にGirl with Balloon(風船と少女、または、赤い風船に手を伸ばす少女)

そして、これは鉄の扉に描かれたバージョンです。バンクシーの原点は路上なんだ、というのが伝わってきます。ストリートアーティストの作品は廃材とも相性が良いです。

Girl With Balloon Diptych 2枚1組の風船と少女

最後に、少女の部分と風船の部分が分かれた2枚1組の「赤い風船に手を伸ばす少女」です。風船に手を伸ばす少女。そして、空高く飛んでいく赤い風船が、別々のキャンバスに描かれています。

Girl with Balloon(風船と少女、または、赤い風船に手を伸ばす少女)から派生した作品たち

バンクシーの代表作「Girl with Balloon」をベースに、新しい作品や事件、パフォーマンスが展開されてきました。

例えば、2005年にパレスチナで誕生したこちらの作品。

Balloon Debate -2005年

バンクシーはパレスチナとイスラエルを隔てる分離壁に「Balloon Debate(バルーン・ディベート)」をスプレーで吹いています。2005年のことです。

また、バンクシーはこの作品を残した後、次のようなメッセージを残しています。

イスラエル政府はパレスチナ自治区を取り囲む壁を建設している。この分離壁はベルリンの壁より3倍も高く、完成すると全長 700キロメートルにも及ぶ。これは、ロンドンからチューリッヒまでの距離と同じだ。この分離壁は、国際法上では違法。パレスチナを世界一大きな刑務所に変えた。

バンクシー

【動画】バンクシーがパレスチナとイスラエルの分離壁にスプレーペイントする様子

バンクシーが分離壁に作品を残した当時のニュース映像です。分離壁に向かって作業をしている間、バンクシーはずっと兵士に銃を向けられていたとのこと。命を張ってまで表現したい何かがあったということでしょうか...

【動画】Girl with Balloon:シリアバージョン - 2014年

次にシリア内戦勃発から3年が経過した2014年3月。バンクシーは「Girl with Balloon(風船と少女)」の女の子をシリア難民の少女に変えて作品を制作しました。

このシリア人少女の作品は SNSで #withsyria というハッシュタグと共にシリア内戦の犠牲者への支援を募るキャンペーンで拡散されました。

また、パリのエッフェル塔やロンドンのトラファルガー広場など、世界の有名な観光地ではプロジェクターでも映し出されました。

バンクシーは作品の発表に際して自身の公式ウェブサイトで下記の声明を出しています。

2011年3月6日、シリアの街ダルーアで、反権威主義のグラフィティを描いたことで、15人の子供が逮捕され、拷問された。15人の子供が拘束されたことに対する抗議がシリア国内の暴動の勃発に繋がり、シリア国内の反乱が内戦へ発展。930万人の市民が家を失った。

バンクシー公式サイトから

このキャンペーンには英俳優のイドリス・エルバも参加。一人でも多くの人に拡散してもらおうと #WithSyria という動画も制作しています。

また、こちらで実際に動画が視聴できます ↓


バンクシー、ブレグジット(英国EU離脱)にどうしても黙っていられずに取った行動とは?

イギリス総選挙が行われた2017年 6月8日の翌日。バンクシーはユニオン・ジャック版の「Girl with Balloon」のリリースを発表。そして、この限定エディション作品を無料で配布すると告知しました。

ただし、応募には条件がありました。それは、北ブリストル... 次に 西ブリストル... 北サマセット... ソーンベリー... また、キングスウッド、最後にフィルトン。これら6つの選挙区に居住する有権者であること。そして「保守党への反対票を投じたことを証明する投票用紙の写真をお送り頂ければ、後に無料の作品を郵送で送る」というものでした。

数日後、バンクシーは自身の公式ウェブサイトで配布を予定していた作品画像と共に以下の声明を出します。

商品リコール - 幻の風船と少女が発売中止

無料で作品を提供するなら選挙結果を無効にします。バンクシーは英国選挙管理委員会からこのような警告を受けてしまい、「残念ですが構想もよく練り切れてなく、法律的にもグレーなこのキャンペーンを中止することにしました」とリコールが出されましたを発表。

ユニオンジャックの「Girl with Balloon」は幻となりました。しかし、最終的にバンクシーがブレグジットを阻止しようとした象徴的な事件になりました。

「Girl with Balloon(風船と少女、または、赤い風船に手を伸ばす少女)」がイギリス国民が選ぶ一番好きなイギリス人アーティストの作品に選ばれる

同じく2017年の7月、サムスンが絵画のように壁に掛けられる液晶テレビ「THE FRAME」の発売を記念して、イギリス人2000人を対象に「イギリス人アーティストの作品で一番好きな作品を選ぶ」人気投票が行われました。

イギリスを代表する19世紀の風景画家、ジョン・コンステイブル「乾草の車」や ウィリアム・ターナーの「解体されるために最後の停泊地に曳かれてゆく戦艦テメレール号」を抑え、バンクシーの「Girl with Balloon(赤い風船と少女)」が堂々の1位に選ばれました。

【動画】オークションにかけられた「Girl with Balloon(風船と少女)」 が落札直後、シュレッダーにかけられる

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2018年10月5日、イギリスのオークションハウス「サザビーズ・ロンドン」のオークションに「Girl with Balloon(風船と少女)」が出品されました。美しい中世の額縁に額装された作品です。

「風船と少女」はこの日、最後に出品された目玉作品でした。

しかし、約1億5000万円で落札された瞬間、予め、バンクシーが額縁に仕込んでいたシュレッダーが作動開始。そして、大勢の目の前で、高額で落札されたばかりの作品が細断されて行きました。もう、なす術なし、状態。途中、シュレッダーが中途半端に止まってしまい、作品の半分だけが細断されたのは、バンクシー本人も予想外の出来事だったそうです。

実際のオークション会場の様子 がこちら↓

この「Girl with Balloon(風船と少女)」のシュレッダー事件についての詳しい記事 ↓

えっ!まじで? バンクシーの作品「GIRL WITH BALLOON」が1億5千万円で落札直後、シュレッダーでビリビリに??

メディアを通じてこの珍事が瞬く間に世界中に拡散。日本でもあまりバンクシーに興味のない人たちが彼を知るきっかけになり、この事件以降、バンクシー作品の価格上昇が加速しました。

これまでオークション中に新たな作品を生み出した人物がいたでしょうか。さらに、その作品の制作過程をSNSで世界中に発信した人がいたでしょうか。この騒動が美術史の1ページに刻まれることは間違いありません。

【Love is in the Bin、愛はゴミ箱の中に】シュレッダーで細断された「Girl with Balloon」 その後:落札額は過去最高約29億!

2021年10月14日のサザビーズ・ロンドンのオークションに、バンクシー史上最も衝撃的な作品「Love is in the Bin」が出品。予想落札額が6〜9億円のところ、予想額を大きく上回り最終的に約29億円で落札。バンクシーの作品としては史上最高額を叩き出しました。

ちなみに「Girl with Balloon」はビリビリに切り刻まれ、「Love is in the Bin アイはゴミ箱の中に」に名前が変わりました。

落札者名は公表されていませんが、アジアのコレクターだそうです。

「Love is in the Bin」について詳しくはこちらから。

これまで「Girl with Balloon(風船と少女)」にはその都度、新しいメッセージがバンクシーによって吹き込まれ、発信されてきました。今後も新しい作品が生まれたときにはこの記事に追加していく予定です。

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