Home » Articles » バンクシー, Banksy「Girl with Balloon」(風船と少女)作品解説

バンクシー, Banksy「Girl with Balloon」(風船と少女)作品解説

投稿日: 2021-03-19 / 最終更新日: 2021-07-30

バンクシーの作品の中でも世界中で最も有名なのが「Girl with Balloon」(風船と少女)である。

日本語タイトルに「風船と少女」と付けられているこの作品は、「Girl and Balloon」「Balloon Girl」「Balloon and Girl」と呼ばれる。それだけ世界中のあちこちで注目され、人気も高い作品ということなのだろう。

オリジナルのGirl with Balloon(風船と少女)は初め、テムズ川沿いにスプレーペイントされた

「Girl with Balloon」は2002年、ロンドン南部のエリア「サウスバンク」のテムズ川沿いにある階段の壁に壁画として登場した。現在は市の職員によって塗り直されてしまっている。

突風により少女の手元から離れて行くハートの形をした風船。その風船を捕まえようと手を伸ばす少女。少女の風船は真っ赤に塗られていて、後方、階段付近には「THERE IS ALWAYS HOPE」(希望はいつもある)というメッセージが添えられている。

ハート型の風船は「愛」の象徴だとも言える。人が生きる上で根元となるものが「愛、思いやり」だ。これを失くしてしまうと、人はすべてを喪いかねない。

幼い頃には持っていたはずの純粋な心をもう一度、取り戻そうとしているのか、大切にしていたものが手から離れて行ってしまったのか、希望を掴みに行ってるのか、見るたびに以前に観た時とは違った感情が生まれる、印象的な作品だ。

ペーパー作品としての「Girl with Balloon」は2004〜2005年の間にPictures on Walls(以下POW)からシルクスクリーン印刷で発売された。サイン入り(Signed)が限定150枚、サインなし(Unsigned)が限定600枚の合計 750枚が発売された。

風船の色が違うカラーバリエーションやオリジナルキャンバス、錆びた鉄板など、様々なバリエーションの「Girl with Balloon」が存在する。

風船の色が(金) ゴールドの「Girl with Balloon Gold」

Girl with Balloon Gold

錆びた鉄にステンシルスプレーされた Girl with Balloon

「Girl with Balloon」から派生した作品や事件

バンクシーの代表的作品とも言える「Girl with Balloon」をベースに、新しい作品や事件、パフォーマンスが発信されてきた。

例えば、2005年のパレスチナで誕生したこの作品↓

Balloon Debate, 2005

2005年、バンクシーは「Girl with Balloon」の延長線上に壁画「Balloon Debate」をパレスチナとイスラエルを隔てる分離壁に残した。

壁にはたくさんの風船に掴まり、今まさに分離壁を越えて行こうとしている少女の姿がステンシルスプレーで描かれている。

この作品を残した後、バンクシーは次のようなメッセージを残している。

イスラエル政府はパレスチナ自治区を取り囲む壁を建設している。この分離壁はベルリンの壁より3倍も高く、完成すると全長700キロメートルにも及ぶ。これは、ロンドンからチューリッヒまでの距離と同じだ。この分離壁は、国際法上では違法で、パレスチナを世界一大きな刑務所に変えた。

– バンクシー

バンクシーが「Balloon Debate」を分離壁にスプレーペイントする様子

2014, Girl with Balloon シリアバージョン

シリアの内戦勃発から3年が経過した2014年3月。バンクシーは「Girl with Balloon」の少女をシリア難民の少女に変えた作品を制作。

このシリア人少女の作品は SNSで#withsyria というハッシュタグと共にシリア内戦の犠牲者への支援を求めるキャンペーンのために拡散された。

この作品はパリのエッフェル塔やロンドンのトラファルガー広場など、世界の有名な観光地でプロジェクターで映し出された。

作品の発表に際してバンクシーは自身の公式ウェブサイトでこんな声明を出している。

2011年3月6日、シリアの街ダルーアで、反権威主義のグラフィティーを描いたことで、15人の子供が逮捕され、拷問された。15人の子供が拘束されたことに対する抗議がシリア国内の暴動の勃発に繋がり、シリア国内の反乱が内戦へ発展し、930万人の市民が家を失った。

バンクシー公式サイトから

このキャンペーンには英俳優のイドリス・エルバも参加し、#WithSyriaのハッシュタグと共にこんなYouTube動画も制作された。

バンクシー、自身の影響力を利用して2017年 英総選挙に介入?

英総選挙が行われた 6月8日の翌日2017年6月9日、バンクシーは赤い風船をユニオンジャックに変えた「Girl with Balloon」のリリースを発表。

こちらの限定エディション作品は完全に無料だが、作品の入手には1つだけ条件があった。

その条件とは、ノース・ブリストル、ブリストル・ウェスト、ノース・サマセット、ソーンベリー、キングスウッド、フィルトンこれら6つの選挙区に在住する有権者であること。

そして、応募条件は「保守党への反対票を投じたことを証明する投票用紙の写真をお送り頂ければ、後に無料の作品を郵送で送る」というものだった。

しかし、その数日後、バンクシーは自身の公式ウェブサイトで発売を予定していた作品画像と共に以下の声明を出した。

作品リコール

「無料で作品を提供するなら、選挙結果を無効にします」と 英国選挙管理委員会から警告を受けました。残念ですが、構想もよく練り切れてなく、法律的にもグレーなこのキャンペーンを中止することにしました。

ということで、ユニオンジャックの「Girl with Balloon」の配布は幻となった。

Girl with Balloonをイギリス国民が一番好きなアート作品に選ぶ

同じく2017年の7月、サムスンが絵画のように壁に掛けられるサムスンの液晶テレビ「THE FRAME」の発売を記念して、イギリス人2000人を対象に「イギリスのアーティストの作品で一番好きな作品はどれ?」という人気投票が行われた。

イギリスを代表する19世紀の風景画家、ジョン・コンステイブル「乾草の車」や ウィリアム・ターナーの「解体されるために最後の停泊地に曳かれてゆく戦艦テメレール号」を抑え、バンクシーの「Girl with Balloon」が堂々1位に選ばれた。

サザビーズ ・ロンドン(2018年)で「Girl with Balloon」1.5億円で落札直後にズタズタに破壊

2018年10月5日、英大手オークションハウス「サザビーズ・ロンドン」でオークションが開催され、額装済みのオリジナル作品「Girl with Balloon」がオークションに出品された。

こちらの「Girl with Balloon」は、この日のオークションの最後に出品された目玉作品で、約1億5千万円で落札直後に額縁に内蔵したシュレッダーが作動し始め、1.5億円の作品がカットされた。途中でシュレッダーが止まってしまったのはバンクシー 本人も予想外だったそうだ。

実際のオークション会場の様子↓

この「Girl with Balloon」の破壊事件について詳しくはこちらのリンクから↓

えっ!まじで? バンクシーの作品「GIRL WITH BALLOON」が1億5千万円で落札直後、シュレッダーでビリビリに??

世界中のメディアを通じてこの騒動が拡散され、日本でもバンクシー に興味のない人たちが少しずつ彼をを知るきっかけになった。この事件以降、バンクシー作品価格の上昇が加速していった。

これまで「Girl with Balloon(風船と少女)」にはその時代、その土地に応じて新しいメッセージが吹き込まれ、バンクシーにより発信されてきたが、今後も何か動きがあったときはこの記事もアップデートしていこうと思う。

「バンクシー, Banksy「Girl with Balloon」(風船と少女)作品解説」への2件のフィードバック

  1. コメント失礼致します。
    ネットでディズマランドでゲリラ販売されたgirl with balloon(入場券のコピー付き)を購入しました。やはりこちらも偽物なのでしょうね…。実際にゲリラ販売というのはあったのでしょうか?教えて頂けたら有り難いです。

    1. The Art of Banksy

      コメントありがとうございます。

      実際にバンクシー作品を認証する機関「ペストコントロール」に確認したこともあるんですが、
      ディズマランドで作品をゲリラ販売した事実はないと回答が返ってきました。

      僕自身もディズマランドに5回ほど行きましたが、ゲリラ販売された事実は聞いたことがありませんし、
      入場券のコピーはただの印刷で、簡単に複製できますので、返品できるなら、全額返金してもらうことをオススメします。

      ペストコントロールのサイトにもそう書いてあります。
      下に抜粋した英文をコピペしておきました。

      よろしくお願いします。

      There are hundreds of stencils of Banksy images online, and unscrupulous people use them to make fakes – especially road signs for some reason – and then give them realistic sounding back stories in order to sell them for a lot of money. They are not real.
      Always remain sceptical. There were no Dismaland Certificates of Authentication or ‘free art’, and Banksy has no license agreements – so things like the ‘wine collaboration’ are entirely deceitful.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です