バンクシーは2008年5月3日から5日までロンドンの「Leake Street」という通りで伝説のストリートアートフェスティバル「Cans Festival=カンズフェスティバル」を開催しました。
ここはロンドンにある有名な観覧車「London Eye」から徒歩3分の場所。かつて、ユーロスターで使われたロンドンのウォータールー駅の下にあるトンネルの中でした。
当時、ここは立ちションのアンモニア臭が漂う悪名高き場所として有名で、お客さんを拾う前のタクシーだけが使うような場所でした。ちなみに、バンクシーもこのトンネルの壁にいくつか作品を残していました。バンクシーにとっては馴染みの場所だったわけです。
こちらの動画が当時の様子を撮影したものです。動画でトンネルの中やフェスティバルの準備→開催時までの様子を見ることができます。
世界中から40人のアーティストを招待
バンクシーは世界中から40人のアーティストを招待。
参加したのはPOWこと(Pictures on Walls)の所属アーティストが多く。また、その中にはMr.BrainwashなどPOW以外のアーティストもいました。そして、世界中から招待されたアーティストがそれぞれトンネル内の壁に作品を書きました。作品を描く際のルールはシンプル。他のアーティストの作品を覆わないことだけでした。
参加したアーティストの中にはDOLKやBlek Le rat(ブレック・ル・ラット)... Mr.Brainwash(ミスター・ブレインウォッシュ)...そして、POBEL、Pure Evil、Faileなど、今やグラフィティアート界を代表するアーティスト達です。
ちなみに「Cans Festival=カンズフェスティバル」はフランスのカンヌで行われるカンヌ国際映画祭「Cannes Festival」をパロった名前。
DOLKやMr.Brainwash(ミスターブレインウィッシュ)など、このフェスティバルをきっかけにさらに有名になって行きました。
バンクシーが残した壁画
バンクシーはこのフェスティバルに際して、こんなことを語りました。
グラフィティは建物をダメにするだけじゃない。実際は、多くの建物を改善する唯一の方法である。たった数時間の間に数百本のスプレー缶を使っただけで、汚く放置された場所をアートで埋め尽くし、都会のオアシスに変えることもできる。
Blek Le Ratが残した作品
破壊された車。そして、その車の中から木が生えてきています。また木の枝にはたくさんの監視カメラが取り付けられている...
DOLKが残した作品
なぜ、Cans Festivalが伝説のストリートアートフェスティバルなのか?そして、Cans Festival後のトンネルは?
誰も寄り付きたくないような場所だったトンネルは「Cans Festival」によって生まれ変わりました。
この場所は世界中からストリートファンが訪れる合法的グラフィティアート・エリアになり、お洒落スポットに変貌を遂げました。トンネル内にバーやライブ会場ができ、以前の暗いだけの場所ではなくなりました。僕も個人的に2009年〜2010年にここのクラブに行った事があります。
ちなみに、2010年バンクシーが自身初、監督映画「Exit through the Gift Shop」を公開する時にこの場所で試写会を行なっています。そして、今はグラフィティトンネルという名が付き、一定のルールのもと合法で誰もが壁に作品を残せる世界でも数少ないグラフィティアートのメッカになっています。
バンクシーが示した最高のジェントリフィケーションの例
「ジェントリフィケーション」とは都市において、比較的低所得者層の居住地域が再開発や文化的活動などによって活性化し、その結果、地価が高騰することを言います。
まず、バンクシーはアンモニア臭かった廃墟寸前のトンネル中にアート作品を残し、このトンネルをお洒落でイケてるスポットに変えました。そして、グラフィティアートで埋め尽くされたトンネルの中にはバーができ、クラブができ、若者が集まる流行りの場所へと変貌を遂げました。
バンクシーはほどんと価値のなかったトンネルを人々が集まる場所に変えました。人の流れを作り、多大なる経済効果生み出したこのストリートアートフェスティバルが生み出した、ジェントリフィケーションの効果は絶大なるものです。