えっヴィクトリア女王がレズビアン?そんなタブーすれすれの噂話を、あえてアートに昇華させたのが、このバンクシー作品「Queen Victoria」です。
ガーターベルトの女王が“女性”にまたがる構図は衝撃的です。
英国王室への痛烈な風刺、そしてバンクシー流の愛の再解釈。あのスーパースターをきかっけに世界を騒がせた「Queen Victoria」について、ここから迫っていきます。
王冠 x ガーターベルト x ニーハイブーツ? バンクシーの大胆すぎる挑発

バンクシー《Queen Victoria》は2003年、ロンドンのストリートで初めて登場しました。
ステンシルで描かれたその絵は、英国王室に対する痛烈な皮肉として。瞬く間に話題となります。
そこに描かれているのは、王冠と王笏(おうしゃく(杖))を持つヴィクトリア女王。
しかし、彼女は、ミニスカートにニーハイブーツ、ガーターベルトという挑発的な装いで、もう1人の女性の顔にまたがっています。
これは、性的な意味を持つ“queening”という行為を暗示し、ヴィクトリア女王にまつわる
「女性は同性愛にならない」とした発言を、真っ向から皮肉った表現となっています。
女王の言葉が、法になった時代
1837年から1901年まで在位したヴィクトリア女王。かつて、彼女は「女性同士の同性愛など存在しない」と発言し、その発言は結果的に女性の同性愛を取り締まる法律が作られない一因となったとも言われています。
一方で、「実は女王自身が同性愛者だったのでは?」という噂もささやかれており、バンクシーはその“矛盾”を皮肉る形でこの作品を作りました。
世界的にバズった「アギレラ・ショック」

この作品が世界中に知れ渡った最大のきっかけは、2006年のある出来事でした。当時、結婚していたポップスター「 クリスティーナ・アギレラ」が、バンクシーの「Queen Victoria」を含む3作品を当時約5000万円(£240,000)で購入したのです。
そして、後に彼女は離婚し、レズビアンであることを公表。また、この購入とカミングアウトが重なったことで、作品の注目度は爆発的に上昇。まさにアートと社会が交錯した瞬間でした。
サザビーズでの落札と、市場価値の確立
そして、アギレラの購入後、2008年には世界的オークションハウスサザビーズにて、「Queen Victoria」のオリジナルが出品され、
約5500万円(£277,250)で落札されました。
また、同作は2008年にレコードのカバーデザインとしても使用され、アートと音楽文化の橋渡しをする存在に。
シルクスクリーン版は500枚のみ。コレクター垂涎の1作

この作品には、
Pictures on Walls(POW)から
リリースされたシルクスクリーン版も存在します。
- 制作年:2003年
- サイズ:70cm × 50cm
- エディション数:500(うちサイン入りは50枚)
そのビジュアルとエピソード性... そして入手難度の高さから、現在でも非常に高い人気を誇っています。
まとめ
それらをユーモアと毒で切り裂いた《Queen Victoria》。
この作品は、バンクシーの中でも“もっとも挑発的で、美しく、記憶に残る”作品のひとつです。