バンクシーが、2022年11月11日(日本時間)に一枚の写真を、18日には一本の動画を自身の公式インスタグラムへ投稿しました。実に11ヶ月ぶりのことです。
バンクシーの投稿 ↓
いつものようにコメント欄には「Borodyanka, Ukraine」とだけ書き記されています。
Borodyanka = ボロディアンカとはウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊にある街の名で、2022年2月24日にロシア軍はウクライナへ侵攻、同年の4月頃までロシア軍によって占領され、ウクライナの街の中でも爆撃を一番多くうけた街の一つとされています。
今現在もウクライナ戦争は継続中ですが、バンクシーはそんな危険な場所へどうやって辿り着き、どうやってウクライナ語を話す通訳をつけ、どうやってストリートアート作品を残してくることができたのでしょうか?
ただ、バンクシーが作品を残してきた地が、戦争被害を大きく受けたと言われるウクライナ、キーウ(キエフ)近郊の街であったことは確かです。
バンクシー公式インスタグラムへ投稿された動画 ↓
今回の動画について、バンクシーのコメントは一切なし。
バンクシーがウクライナの街に投下した、七つのグラフィティアートたち
バンクシーは、2022年11月18日、ウクライナの砲撃が酷かったとされている街の建物の壁を一枚の大きなキャンバスに見立てて、グラフィティアート作品をステンシルスプレーで吹き付けていく様子や地元住民へのインタビューも交えながら、ウクライナの伝統的な曲にのせて制作した動画を投稿しました。
今から紹介するグラフィティアートたちは、バンクシーが直接関与していることを示し、ウクライナ戦争の現状を世界に伝える強力なメッセージになっています。
入浴する紳士
ウクライナ近郊の街、ホレンカ。爆撃の被害にあったと思われる建物にステンシルスプレーペイントで入浴中の紳士が表現されています。若く働き盛りの男性は国を守るという大義名分の本、兵隊として駆り出されているため残っているのは持病を患っている人か、この世代だけでしょう。
ご婦人
消化器を手にガスマスクをつけたご婦人。急な爆撃音に何事かと飛び起き、慌ててガウンを羽織り飛び出てきた様子が伺えます。
新体操選手
首にコルセットを巻いたまま演技を続ける新体操選手です。頸部を痛め、苦しそうな表情のまま踊り続けるこの絵に違和感を感じます。この新体操の選手が立っているのも爆撃を受けた穴の上。
爆撃を受けた後もなお、女性たちの苦しい生活が続いていくことを表現しているのでしょうか。
体操する少女
2022年3月22日、ウクライナ東部の都市マリウポリが砲撃される最中、ウクライナの体操少女(10歳)と彼女の父親が亡くなり、病院へ搬送された家族も全員亡くなったとウクライナ体操連盟が発表しています。レオタードを着て体操をしている少女は、カタリーナ・ディアチェンコさんにどことなくシルエットが似ている気がします。
作品を残した場所は、見るからに爆撃を受けたとわかるアパートの壁でした。
この体操をする少女は爆撃で破壊された瓦礫の上で逆立ちしながら、必死でバランスを取っているように見えます。
100人いたら100通りの作品解釈が生まれると思いますが、バンクシーの哀悼の気持ちと戦争で破壊された街でも、うまくバランスを取りながら華麗に生きてほしい。こんな環境からでも自分がやりたいことで幸せになっていって欲しい、この作品にはそんな希望が込められているのかもしれません。
シーソー
5つ目の作品は、戦車の侵入を防ぐための金属をシーソーに見立てて、遊ぶ子供達を描いています。くったくない笑い声が聞こえてきそうです。
これでもくらえ
6つ目は、元々あった男性器の落書きを大砲に見立て、バンクシーがステンシルスプレーペイントでトラックを付け足し完成させています。
プー◯ンを投げ飛ばすゼレンスキー
そして、最後が意味深なこの作品。
「小よく大を制す」という格言がありますが、この少年はウクライナ、そして、投げ飛ばされている大男はプーチン大統領を表しているようです。
動画内ではこの作品が登場する際に、ウクライナ人の親子が登場します。
母親がインタビューに答え、この場所が幼稚園であったこと、多くの人が亡くなったこと、そして、子供がこの幼稚園に通っていたこと、涙が枯れるまで泣いたことを話しています。
バンクシーが動画で伝えたかったこと
動画の後半、一瞬だけ次のメッセージが流れます。
In solidarity with the people of Ukraine(ウクライナの人々と連携して)
Banksy, Ukraine
その直後(動画の最後)には男性器を大砲に見立てた作品について、一人の男性が「この作品について言ってるのか?もしそうなら、彼の歯を全部蹴折って、足の骨を折ってやりたい」と吐き捨てるシーンで終わります。