上の写真を見た瞬間、「あ、これ、バンクシーじゃない?」と思ったあなたは相当なものだろう。
2年に1度、開催される世界最大かつ、最も権威のある国際的な現代アートの祭典「ヴェネチア・ビエンナーレ」は、5月11日から水の都 ヴェネチアで開かれている。
開催日から数日後、Banksy(バンクシー)の作品と思われるグラフィティがヴェネチアの街のとある壁に出現し、「バンクシーがヴェネチア・ビエンナーレにぶつけて作品を残したのか?」と話題になっていた。
しかし、バンクシーの公式サイトやインスタグラムをチェックする限り、そのことについては何も触れられていない。
そんな中、5/22(水) の夜、バンクシーの公式インスタグラムに下記のような動画が投稿された。
バンクシーがインスタグラムへ投稿した1分の動画
Youtubeで見たい方はこちら
バンクシーの公式インスタグラムに書かれていたコメントは.....
Setting out my stall at the Venice Biennale. Despite being the largest and most prestigious art event in the world, I've never been invited.
https://www.instagram.com/p/BxxOKYflVSl/
日本語に訳すと.....
ヴェネチア・ビエンナーレに自分の露店を設置した。世界最大で最も権威のあるアートの祭典なのに、俺は招待されたことがない。
https://www.instagram.com/p/BxxOKYflVSl/
VENICE IN OIL(油絵のヴェネチア)
今回、展示されたのは、9枚の独立した油絵をそれぞれ合わせて一つの絵になるという作品。
2枚目の画像の小さなイーゼルには「Venice in Oil」とある。おそらくこの作品のタイトルだろう。
バンクシー、今回のパフォーマンスの意図は?
サメの口のように白い大きな物体は、巨大クルーズ船の一部だ。
ヴェネチアを代表する運河「カナル・グランデ」の周りに、リアルト橋、ゴンドラ。そして、サン・マルコ鐘楼などが見られるが、あきらかにゴンドラに客を乗せ、生計を立てている男の邪魔をしている。
「オイオイ、こっからどうやって進むんだよ.....。」と途方に暮れる漕ぎ手の感情を率直に語っている背中。
ヴェネチアに巨大クルーズ船が乗り入れることで、観光資源となっていたヴェネチアの景観が奪われるだけでなく、ゴンドラで観光客を案内することで生計を立てていた男たちも暇を持て余している様子で、地元民が抱える問題を風刺しているのかもしれない。
バンクシーの想い
巨大クルーズ船にヴェネチアの景観を奪われ、観光資源を奪われ、ゴンドラの漕ぎ手たちの生活は大丈夫なのだろうか?と心配になってくる。
この問題を世界中の多くの人に知ってもらう事で、地元民の窮状をバンクシーは救いたかったのだろうか?
私たちは、バンクシーが生み出すものから判断するしかない。
P,S,
冒頭にも書いたが、この作品を一目見て、バンクシーの作品だと気が付いたあなたは環境や状況に左右されず「本物を見抜く目を持っている」と言いたい。
「VENICE IN OIL」という一見普通っぽく、でも一度見たら忘れられない筆跡は、バンクシーの作品に欠かせないものであるし、筆のタッチや、登場人物の感情がダイレクトに伝わってくる技は素晴らしい。
実は、ヴィエンナーレ開催数日後に、一つのグラフィティアートが見つかっていた。↓
あらゆるメディアに大きく取り上げられ、SNS上でも盛り上がっていた。
だが、未だ、バンクシーはこのグラフィティアートに関して何も触れていない。
2019年5月25日追記: 「Venice In Oil」の動画公開後、バンクシーは「おそらく難民と思われるライフジャケットを着た少年」を描いた作品の画像も公式インスタグラムで公開している。)
真偽はともかく、バンクシーは先に「Venice in Oil」に多くの視線を向けさせ、考えて欲しかったのだろう。
P,P,S,
ヴェネチア・ビエンナーレは今年 2019年の5月〜11月まで開催中。