2025年5月29日、Banksy(バンクシー)が約5か月ぶりに自身の公式インスタグラムを更新。そこで、新作の壁画作品を発表し、世界中のアートファンやSNSを大きく賑わせています。
実際の投稿がこちら。
今回も例によって、作品のタイトルや場所は明かされていません。しかし、ネット上ではフランス・マルセイユで撮影された可能性が高いとされています。そして、実際にマルセイユで作品の画像や動画を投稿する人もいるので、マルセイユで取られたものでしょう。
灯台と車止めポールがつくり出す視覚トリック。そして、そこに添えられた「I want to be what you saw in me」というメッセージには、どんな意味が込められているのでしょうか
灯台と車止めポールの錯視(さくし)が生み出す、バンクシー流マジック

今回の壁画の最大の特徴は、灯台が実際の構造物ではなく、道路脇に設置された車止めポールの影として描かれていることです。実際の影は道路側に伸びていますが、バンクシーが歩道の上に影を書いて、車止めポールの陰で映し出されたのがピカピカ輝く灯台というわけです。
この視覚トリックによって、ただの街の風景の一部が、命あるシンボルへと昇華されています。
壁に描かれた灯台のその中心から放たれる白い光は、「希望」や「導き」「奥底に眠る美しい姿」を象徴しているようにも見えます。
作品に添えられたメッセージ - “I want to be what you saw in me” - の意味とは?

作品のそばには、スプレーペイントで...
- I want to be what you saw in me -
直訳すると、「あなたが私に見たものに、私はなりたい」
というフレーズが添えられています。
この一文には、他者の視線を通して自分を見つめ直す、非常に個人的かつ普遍的なメッセージが込められているように思えます。「あなたが見た理想の自分になりたい」という自己への願望と、「本当にそうなれるのか」という不安や孤独も読み取れます。
もしくは、”日常の中にある小さなものでも、見方を変えれば大きな意味を持つかもしれない。” 人生は捉え方次第で、いくらでもこの灯台のように輝かせることができる... そんな意味にも取れます。
灯台が放つ光は、"希望"や"信頼" そして"愛"といった温かい感情のメタファーとも言えるでしょう。
前作「聖母マリアとキリスト」からの進化と対比

この壁画は、バンクシーが2024年12月に発表した「Mother and Child」以来の新作です。
前作の記事はこちらでご覧になれます。→バンクシー 聖母マリアとキリストの新作が公開!
前作では、聖母子像という宗教的モチーフを現代的に再構成し、家庭的な親密さと聖性をテーマにしていました。
しかし、それに対し、今回の「灯台」はより内面的・普遍的で「他者の期待と自分自身」とのギャップを問いかけるようなテーマ性を感じさせます。
見る人の数だけ意味がある、バンクシーの「灯台の壁画」とは...
バンクシーの作品はいつも、見る者に委ねられた「問い」を含んでいます。今回の灯台の壁画も、アートの中に「自分自身」を映し出すような、不思議な感覚を与えてくれます。世の中見えるものはすべて自分の心の中の鏡です。希望か、孤独か、再生か。あなたはこの灯台に、どんな意味を見出しますか?